空間計量経済学は空間を構成する主体の経済行動について計量的な手法を用いながら分析することを目的としています.私の関心は計量的な手法の開発と応用にあります.例を挙げて考えてみましょう.
太陽光発電は地球温暖化を抑制したり電力供給を安定させたりする場合に有用となることから政府によって推進されています.太陽光発電システムを住宅に導入する場合には住宅が位置する市町村に補助金を申請することができます.注目すべきことは発電1キロワット当たりの補助額や申請1件当たりの上限額が市町村によって異なることです.差異が生じる理由を知りたいと思うかもしれません.補助額や上限額を左右する要因と見られるものを数量化して補助額や上限額との関係を関数として表わすことにしましょう.変数についてデータを収集することができれば適当な関数を見いだすことはできるはずです.市町村は空間を構成する主体であると言えます.空間計量経済学は市町村の補助金にかかわる行動について分析する場合に有用となるのではないでしょうか.
分析することは容易でないと思うかもしれません.補助額や上限額を左右する要因と見るべきものを見ない可能性があります.気象を含む自然環境や財政を含む経済環境を考慮するだけでは十分でないと言えます.市町村はその他の市町村の行動を参考にして行動すると仮定してみましょう.市町村の補助額や上限額を左右する要因と見られるものにその他の市町村の補助額や上限額を加えなければならないことになります.変数について正確なデータを収集することができない可能性もあります.気象データは財政データと違って市町村単位で整備されていないかもしれません.変数の特定や測定にかかわる問題に対処するために計量的な手法を開発して応用することは市町村の補助金にかかわる行動について分析する場合に期待されるのではないでしょうか.
主な研究テーマは以下の通りです.
- 空間計量経済モデルの選択と特定,推定に関する実験
- 地方公共財サービスの配分効率の測定
- スピルオーバーと資源フローの検出
- 空間計量経済モデルにおける予測手法の比較
- 顕示選好アプローチによる生活環境の評価
- 人口の空間分布に関する分析
計量的な手法を開発したり応用したりする場合には空間統計学の知見を利用することも試みています.
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