研究プロジェクト

多元的環境正義を踏まえたエネルギー技術のガバナンス

目的

原発震災並びに再生可能エネルギーの導入に伴う社会的コンフリクトを踏まえ、エネルギー技術を社会的・倫理的視点から総合的に検証・評価することを目的とする。

具体的には、環境問題におけるグローバル―ローカルの緊張関係を踏まえ、多元的正義に基づく持続可能性概念を提示する。そのために、事例研究を通じて関連する主体の利害構造、計画段階から導入に至るまでの合意形成手法の妥当性、地域社会への波及効果などの視点から総合的に評価する。

さらに、国際比較に基づいて、エネルギー技術の導入が地域におけるコンフリクトの原因となる場合と地域社会との相乗効果をもたらす場合とを判別する基準を明らかにし、環境正義を実現するガバナンスを明らかにする。

研究方法

国内外の事例調査を通じて、ステークホルダのフレーミングの齟齬を明らかにする。さらに政策形成や合意形成過程におけるフレーミングの取捨選択の分析を通じて問題構築過程のメカニズムを明らかにし、エネルギー技術における問題制御のガバナンス構造として図式化する。実証的研究では導入地域における諸問題と政策形成過程についての定性調査を行い、その上でエネルギー技術全般への選好と諸課題の認知との関係を定量的に明らかにする。

これと並行して世代間と世代内の環境正義を踏まえた社会理論的として、異なる時空間スケールにおけるフレーミングのズレと利害対立という視点から環境問題を再構成する。さらにこれを解決するために必要な配分的正義や手続き的正義などを踏まえた持続可能性概念を提示する。実証的研究と理論研究によって明らかにされた知見と並行して社会実験を行い、探索的に仮説を検証する。

研究成果の概要

エネルギー技術と社会の関係について事例調査と理論的整理を行い、多様な主体の福利に適う技術とするための条件を明らかにした上で適切なガバナンスを実現する社会実験を行った。

その結果(1)技術がもたらす広義の利害関係を明らかにし、(2)世代間と世代内で発生する法的・倫理的・社会的課題を図式化した。(3)そこで必要とされる分配的正義や手続き的正義を具体化するため社会実験を試行し、政策としての有効性を確認した。

この過程でエネルギー技術の社会的影響について間接的効果を含めた分析枠組みを確立し、手法の汎用性を高めた。また参加型手法による適地選定や条例など、現実のガバナンスに応用可能な方策も提示した。

ステータス
プロジェクト完了
研究資金
科研費 基盤研究(B)
研究期間
2014年4月〜2017年3月
研究代表者
丸山康司(名古屋大学)
研究分担者
西城戸誠(法政大学)
三上直之(北海道大学)
本巣芽美(名古屋大学)
藏田伸雄(北海道大学)
森岡正博(早稲田大学)