第3章 論文の書き方

2012年1月2日

 1.論文の構成
 2.引用の方法
 3.注釈のつけ方
 4.分綴法(ぶんてつほう)
 5.図表
 6.卒業論文の仕上げ
1.論文の構成
 論文は基本的には、以下のような構成になります。卒業論文のような論文は、このオーソドックスな形式に従うのが無難です。
①表紙:
 名古屋大学文学部では、生協などで売っている黒表紙を用います(提出日に購入しようとしても、当然ながら売り切れになっています。早めに購入しておきましょう)。大学によっては、ちゃんと製本して提出しなければならない所もあります。表紙には、以下のことを記入します(黒表紙に紙を貼って書く)。まず、上の方に何年度の卒業論文であるか、次にタイトルとサブタイトル、そして下の方に学科専攻名、学籍番号、氏名を明記します。提出年月日もどこかに書いておきましょう。タイトルや氏名のない卒論は、氏名を書き忘れた入試答案と同じ扱いとなります。

②要旨(abstract):
 卒業論文の冒頭部には、要約をつけます。これは、他の閲覧者のためであるばかりでなく、執筆者本人に、論文の構成を自覚させる効果が期待できるからです。最初に論文のねらいや中心的な仮説を簡単に述べ、続いて各章ごとの内容を順次簡潔に要約してまとめてください。字数はとくに定められていませんが、原稿用紙で2~4枚ぐらいでまとめ、卒論の1ページ内でおさまるようにして下さい。

③目次:
 本文の構成、注釈(註、最近は注と書くことの方が多い)、資料、文献表など論文全体の構成、及びそのページを明記します。また、本文中に図や表を組み込んでいる場合は、その目次も別途作成します。つまり、目次を見れば、何ページに何が書かれているのかが一目瞭然になっていなければなりません。

④本文:
 本文は、序論、本論、結論の3部分に分かれます。うち、本論はさらに、いくつかの章や節に分かれます。当然ながら、本文からは各ページにページ数をつけます。また、章が換わる場合は、改ページをします。節が換わるときは改ページする必要はありません。

 序論:分量の目安は論文全体の5~10%ぐらいで、おおよそ以下のことを書きます。
  a. 論文で取り上げようとする主題あるいは問題の提起
  b. その問題を取り上げる動機
  c. その問題の重要性や取り上げる意義
  d. その問題の背景
  e. その問題を考察するにあたって用いる手段
  f. 本論の大まかな流れ

 本論:議論の主内容を展開する部分で、いくつかの章に分かれる。
 結論:序論で提起した問題に答え、今後に残された課題等についても触れておく。
 
⑤注釈リスト:
 (この章の3.注釈のつけ方を参照)。

⑥資料:
 付録ともいいます。注釈としては長すぎるものや、議論と関係はあるが、直接引用するには適さない文章(行政資料や条文)などは、資料としてここに収めます。

⑦文献表(第4章を参照):
 ページを改めて、論文の最後に来るリストが文献表です。枚数の少ない雑誌論文などでは、注釈リストのあと、一行あけて文献表がきます。しかし、枚数の多い論文の場合は、ページを改めて文献表を掲載します。卒業論文の場合は改ページした方が無難でしょう。 文献表は、議論の出典を明らかするためのものです。また、同じテーマに関心を持つ人にとっては、文献探しの参考となるものでもあります。だから、文献表に記載する文献の量が多ければいいってもんじゃない。
 ※ 文献表には、本文中で引用した文献、もしくは参照指示を出した文献、先行研究など議論の参考とした文献、などだけを記載する。全く関係ない文献を記載しないように!

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2.引用の方法
 卒業論文を書く場合、文中で既存の理論や先行研究などとして、誰かの論文をを引用することが多々あります。この場合、引用のルールを守らなければなりません。誰かの論文の文章を勝手に自分の論文の中に入れてしまうと、それは瓢窃となります。
 まず、他人の文章を引用する場合、引用する文章は必ず「 」で括ります。長い文章を引用する場合は、上下を一行づつあけ、1~2段下げて引用する文章を書きます。そして、いずれの場合も、引用した文章の最後の部分に、[著者名(名字のみ),西暦発行年,引用ページ]という形式で、引用元を明示します。別に[ ]でなく、普通の( )で括ってもかまいません。この引用形式は、後で述べる文献リストと連動しており、著者名と発行年で、誰の、何というタイトルの本からの引用か分かる仕組みになるわけです(第4章参照)。

《例》
 [青井,1974,p.157]
  →コメント:日本語以外は半角で、ページ数は小文字p後にピリオド。
 [青井,1974,pp.157-178]
  →コメント:複数ページに渡る場合は、pp.xxx-yyyと表す。
 [Alexander,1987=1997]
  →コメント:訳書から引用する場合は、原典の発行年=訳書の発行年という形式で示す。
 [Cohen and Arato,1981] [奥田・広田,1982]
  →コメント:共著論文の場合は、洋書の場合はand、和書の場合は・(中黒)で二人の著者名をつなぎます。最近の洋書ではandでなく、/(スラッシュ)でつなぐ傾向にあるようです。
 [Zald et al.,1995] [船橋他,1988]
  →コメント:3人以上の場合は、最初の1人だけ名字を書き、残りの著者はet al.や他で省略します。
 [Goffman,1961a] [Goffman,1961b]
  →コメント:本文中で、同一人物の同じ発行年の文献を引用する場合は、発行年にa,bをつけて区別します。

 他人の論文を要約して紹介する場合や、本文中で関連する文献名を示したい場合も、これと同じような方法を用いいます。ただし、他人の著作の文章をそのまま転載するわけではないので、「 」で括る必要はありません。この場合は、地の文章の該当部分に[著者名(名字のみ),西暦発行年,参照ページ]という形式で、文献参照指示を書けばよいのです。
 
《例》
 [奥田,1983,pp.123-125]
  →コメント:このように書けば、奥田の1983年の論文の123ページから125ページを参考にしたことが読者にもわかる。
 [奥田,1983;倉沢編,1990;高橋編,1992]
  →コメント:複数の本を参考にした場合は、セミコロンでつなぎます。
 [Johnston & Klandermans(ed),1995] [川崎・藤村編,1992]
  →コメント:編著で本全体を参照した場合は、編者名を示しておきます。

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3.注釈のつけ方
 卒論を書く際、書きたいことすべてを本文に入れてしまうと、枝葉の多い読みにくい文章になります。もちろん「余計なことは書かない」ということが大原則ですが、実際に卒論を書いていると、「内容に関連するけど本筋ではないこと」や「参考のために記しておいた方がいい内容」等がでてきます。この場合に、その内容を注釈として付けるわけです。注釈のことを「註」もしくは「注」と表記する場合もあります。
 注釈の付け方はいくつかあります。とりあえず、代表的な注釈の付け方を挙げると、次の3つがあるでしょう。
 
  ①本文中に注釈番号を付け、そのページの終わり(脚注という)か、その章の終わり、もしくは論文の最後にまとめるかたちで、注釈を付ける。
  ②本文中に括弧をつけて割り込ませる(割注という。ただし、短い注釈に限る)
  ③注釈が長く、1節分ぐらいの分量がある場合は、補論というかたちで節を設ける。
 
 ここではより一般的な①について説明します。②は用語の英字表記など、簡単で短い内容のものの場合以外は使用しない方がよいでしょう。③は高度なワザなので、使用しない方が無難です。①を用いる場合、卒論の場合は、基準字数が400,000字(20字×20行×100枚)とそれほど長い論文ではないので、脚注ではなく論文の最後に注釈をまとめるのがベストだと思われます。
 本文中に、注釈をつける場合は、一般的には右上に注釈番号をつけます1)。ワードプロセッサを使用する場合は、たいていは上付で番号を振ることができます。
 注釈番号の付け方は、著者や出版社によって、若干異なり、注釈番号だけの場合2や、番号を括弧でくくる場合(3)もあります。
 注釈番号をふっただけでは、注釈にはなりません。別の場所にちゃんと注釈の内容が記されていることが大切です。でないと、文章中の番号がいったい何であるか、読者にはわからなくなってしまいます。
 この注釈を本文の最後にまとめる場合、結論の文章の終わった後、1行あけて注釈のリストを設けます。

注釈番号のふりかた  
  1) 『社会学評論』や『理論と方法』、『家族社会学研究』といった学術雑誌はこの方式を採用している。
  2  洋書の場合は、この方式が多い。
  (3) 両側括弧だと、注釈に気付きやすいけど、字と字との間に不自然な空間が出来るので、この方式は好まれない場合もある。
 
 注釈の部分には、番号に続いて注釈の内容を文章で書きます。一見すると箇条書きのような形式に見えますが、ここではちゃんと文章を書かないといけません。
 注意すべきは、2点あります。まず1点目は、言うまでもないことですが、注釈番号は文章のはじめから1、2、3、4、というふうに通し番号付けていくこと。決して9、3、7、5、4とランダムに番号をふってはいけません。また、同じ番号が2つ以上あるということもないようにして下さい。
 2点目は、本文中の注釈番号と、最後の注釈部分の番号とを対応させることです。ワードプロセッサで文章を何度も書き直していると、注釈番号が狂ってくることがよくあります。本文中の注釈番号の1と、最後の注釈の1)で示される内容とは必ず対応しているようにして下さい。

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4.分綴法(ぶんてつほう)
 欧米語一語の引用が2行にまたがる場合、当の一語がどこで切れるかには、分綴法の規則があります。例えば、英語のso・ci・ol・o・gyは、・のところでは切れますが、それ以外のところでは切れません。辞書を引くと、巻頭の凡例に、分綴法規則が提示され、その上で、各見出し語に、上記・(黒丸)または-(ハイフン)の記号が挿入されていて、分綴可能な個所が明示されています。そこで切って、行端末尾に-(ハイフン)を付し、あとの綴り字は、次行に送るようにして下さい。ただし、行頭または行末が1文字のみとなるのは不可、2文字だけ残るのも、好ましくありません。
 なお、同じく欧米語でも、分綴可能な個所は、各国語ごとに異なるので、注意を要します。例えば、独語のSozio・lo’gieは、・または ‘のところで切ります
 また、Lac’kie・rerのように、Lak-(次行)kie・rerと綴り字を変更しなければならない場合もあります。
 仏語の辞書では、各見出し語ごとには分節可能な個所が示されていないので、各自でまず、巻頭の分綴法規則を会得し、各引用語に適用しなければなりません。

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5.図表
 図あるいは表は、本文での議論をわかりやすくするために、必要な場合に用います。ただし、膨大なデータを提示すると読者は読む気をなくしてしまうので、図や表の量はほどほどにしましょう。
 図と表は、本文中の引照文(本文中で「図1の通り」というように、図や表の存在を読者に知らせ部分)の近くか、もしくは資料の部分におく。議論に不可欠な図表や簡潔で分量の多くない図表は、文中に埋め込み、量の多いもの、議論に直接関係ないものは、論文末の資料の部分におく。

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6.卒業論文の仕上げ
 卒業論文は、手書きの場合は必ず清書し、読み直して誤字、文章の間違いをチェックしてから、提出しましょう。書き終えた論文には、本文1ページより文献表の最後まで通し番号でページ数を入れて、目次の章と節にそれぞれのページ数を示します。