2012年1月1日
レポートとは何ぞや? そんな難しい話はやめよう。とにかく「レポートを制するものは卒論を制す」という格言を信じるのだ。さて、そうなると、レポート執筆に際して修得すべき課題が出てくる。それは、
①問題設定能力
②文献調査能力
③文章構成能力
という3つの能力の修得である。こういうと難しそうに聞こえるが、しかし、別に無理難題を押しつけているわけではない。とにもかくにも、以下で説明することをやってみよう。可能な部分から徐々にでかまわない。レポートの出来が悪くても、2・3年生の間に3つの能力を修得できたなら、それは卒業論文に結びつくだろう。
1.問題設定
2.参考文献を探す
3.アウトラインの作成
4.論文の形式を整える
問題設定能力とは、レポートにおける論点を設定する能力、平たく言えば、レポートで論じるテーマ/課題を決める能力のことだ。
こう言うと「レポートのテーマや課題は、先生が言ったとおりに決まっているではないか」と反論されるかもしれない。しかし、例えば「教育問題について述べよ」というレポート課題が出されたとき、教育問題を十把ひとからげにして論じるというのは無謀である。教育問題には、管理教育、登校拒否、いじめ、少年犯罪、校内暴力、家庭内暴力、拒食症、受験戦争、塾通い、教育困難校など、様々なものがあるのだ。それらの問題のうちどれかに絞り込まないと、教育問題を論じるレポートは書けないだろう。
レポートは、「ワンレポート・ワンイッシュー」でなければならない。つまり、1本のレポートでは、ひとつの論点に限り論じるという姿勢を貫くのだ。論じるべき問題を出来るだけ絞り込み、それについてのみ、深く掘り下げて論じようとすることだ。
レポートでは教育問題の中で何に注目するか、どの一点に問題点を見出だすか、それが問われているのである(このような出題者の意図を読むことも大事だ)。管理教育にテーマを絞ってみても、どこに注目するか、何をどこに問題点を見出だすか、どのような結論を目指すかで、レポート全体の内容が異なってくる。つまり、課題に沿いつつも、「何をどのように論じるか」をより絞り込み、明確にしなければレポートは書けないのである
問題/論点が設定されれば、次は必要な情報収集、つまり参考文献を探すことである。この文献探しは、卒業論文を書く際の重要な作業になるから、レポートを書く際に、しっかりと身につけておきたい。
さて、課題図書を要約して評価する、ある問題についてあれこれと調べた上で考察するなどなど、レポートには様々な種類がある。しかし、どのようなレポートでも、参考文献は探さななければならない。レポートの出題パターン別に、参考文献探しの必要性を見てみよう。
①テーマは指定されているが、課題図書は指定されていない場合
この場合、レポート出題者の意図は簡単明瞭、「あるテーマについて、自分の力で文献等を調べて、何か論じろ」ということである。当然ながら、参考文献を自力で探して読みこなすことが期待されている。単位が欲しかったら、すぐに文献探しに取りかかろう。
②課題図書が指定されている場合
この場合、「文献を探そう」というと、「でも課題図書は先生が指定しているのに、別の本を使うとヤバクない?」という心配が聞こえてくる。もちろん課題図書は「課題」ゆえに読まなくてはならない。しかし、「別の文献を使ってはダメ」などとは誰も言っていない。心配だったら、レポートが出された時点で、参考文献の使用について、教官に質問すればいい。
レポートで求められているのは、課題図書の要約でも読書感想文でもない。課題図書の内容について、批判なり擁護なりをすることが求められている。当然、批判や擁護の論拠も示さなくてはならない。
ところが、例えば、課題とされたマックス・ウェーバーの本を、社会学を1~2年やっただけの頭で、批判や擁護することは、非常に困難だ。そこで、マックス・ウェーバーに関して述べている参考文献を登場させる。例えば、マックス・ウェーバーを批判している文献と擁護している文献の双方を探しだし、レポート上でそれらの論点を対決させ、最後に判定を下す。それで、まともなレポートが1本出来上がる。
③課題図書が難解な場合<
課題図書が難解である場合、力技で無理矢理読み、課題図書の内容を理解せぬままに意味不明のレポートを書くということがある。努力は認めよう。しかし、それは無駄な努力の天然色見本である。つまり、そのようなことは、きわめて非効率なのである。レポートの課題図書は、それを読んで内容を理解し、批評してもらいたいから、課題として設定されるのである。だから、力技で無駄な努力をするより、課題図書を読む前に、入門書や解説書を利用して内容を理解した方が、よほど誠意があることになる。
もし、入門書や解説書によって課題図書の内容を理解することがためらわれるのなら、レポートの中で、参考文献として引用してしまえば良い(引用の方法は、第3章参照のこと)。入門書や解説書も、立派な文献である。ルールを守り正々堂々と利用すれば、何も問題はない。
④自由課題の場合
自由課題の場合は、必ず参考文献を探そう。参考文献なしに「論」を組み立てると、ほとんどの場合、青年の主張か人生論に終わってしまう。もちろん、「自分の主張をするな」ということではない。「主張だけではダメ」なのである。論理的あるいは実証的に、主張の裏づけをしなければならない。その時に、テーマに関係する文献を読み、自分なりに整理してまとめるという作業が必要となるのだ。この作業を行えば、自分の主張が単なる主張で終わることはないだろう。
⑤文献の探し方
さて、肝心の文献検索方法だが、いろいろな方法がある。しかし、最初に必要なことは、文献に触れる、足を使って文献を探し、実際に手に取ってみることである。
レポートで利用する文献は、数冊で十分だ。ただし、使えない文献を見つけてしまうこともあるから、10冊ぐらいは確保しておきたい。卒業論文のための文献検索方法は第4章4節で紹介しているのだが、10冊程度の文献なら、その方法を用いるまでもない。まず、図書館なり研究室なりの書架に入り、めぼしい本を片っ端から見ていく。ポイントは、タイトル、目次、そしてカンである。つまり、
①タイトルを見て、レポートに必要そうな本かどうかを判断する。
②目次を見て、レポートに利用できるかを判断する。
③最後にカンで、レポートに使うかどうかを判断する。
①の段階で、10~15冊程度、選び出す。しかし、タイトルだけでは内容が判断できないから、②の段階で、その10~15冊の目次を見る。そうすればレポートに関係するかどうかが判断できるはずである。目次だけでわからなかったら、まえがきあるいは序論に目を通してみよう。まえがきや序論はその本の要約のような役割を持っているから、その部分を読んで判断材料にすればよい(あとがきには本を執筆した意図や経緯などが書かれている場合があるので、こちらにも目を通した方がよい)。この段階で5~6冊に削ろう。そして、最後はカンで、2~3冊に絞り込む。自分のカンで、「面白そうだ」と思った本の方が、読書の際の集中力が長続きする。いくら役立つはずの文献でも、読む気がないなら読まない方がマシだ。
ここで注意すべきは、あなたがレポートに必要としている文献は、他人も必要としているということだ。しかし、書架にある文献は多くても2~3冊である。つまり早い者勝ちなのだ。めぼしい文献を手に入れるためには、早く行動すること、これに尽きる。
テーマが決まり、必要な文献が揃った。次はいよいよ執筆である。しかし、ちょっと待って欲しい。レポートとはあくまで論である。限られた枚数の中で、問題設定から結論までを、論理展開しなくてはならない。そのためのレポートの見取り図、どのような道筋で、何を書くのかを示した地図を作る必要がある。これをアウトラインと言う。
レポートのアウトラインのパターンは、基本的には以下のようになる。これはレポートだけでなく、卒業論文や、学術論文でも同じである。
①序論/問題設定(問い)
②本論/展開
③結論/回答
一般に、「文章構成は起・承・転・結が正しい」といわれるが、これは漢詩の構成であり、論理展開をするレポートや論文の構成としては、正しくない。「ワンレポート・ワンイッシュー」の姿勢に徹するなら、①序論で問題設定をし、③でその問題に対する回答を行うとパターンになる。そうすると、①問いと③回答を結びつけるような②本論を展開する必要が出てくる。
この本論は本文の8割以上を占める部分であり、道に迷いやすい部分でもある。本論部分は、読み進むにしたがって徐々に結論に近づいていくというパターンが望ましい。だから、本論部分を書く際には、大ざっぱでもいいから必ず地図が欲しい。
アウトラインの地図には、フローチャート式(展開を矢印で繋いだもの)と項目式(レポートの目次のようなものを作る)がある。いずれの場合も、書くべき項目をピックアップして、それを並べてみるという作業である。これを作っておけば、必要な項目を書き落とすことはない。また、書いている途中で進むべき方向を間違ってしまい、予定した結論にたどり着けないということを未然に防げるだろう。
注意すべきは、日本語の問題(実は、論文の形式以前の問題なのだが)であり、それには3点ある。
①字は丁寧に書く
②誤字脱字をなくす
③正しい日本語の文章を書く
a.主語と述語の対応関係を正しくする
b.一文を、短くする
まず①について、当然の礼儀として丁寧に書かなければならない。字が下手な人は特に丁寧に書きたい。きれいでなくてもいいから、出来るだけ読みやすい字で書くという姿勢で臨むべきである。次に②についてだが、確かにどれだけ努力しても、ある程度の誤字脱字は必ず出てくる。しかし、1ページに3つも4つも誤字脱字があると、あなたのレポートに対する姿勢が疑われる。したがって、書き終えてから、一文づつ丁寧に誤字探しをする必要がある。そして③の、日本語を正しく書くことである。主語と述語の関係、および文章の長さには特に注意したい。主語と述語との関係が正しくないと、読み手は文意がとれない。また、長い文章は読みづらいから、一文を短くするよう心がけたい。
日本語の問題を解決するためには、手書きの場合は清書の前に下書きをすること、ワードプロセッサを利用する場合は、書き終えたらいったん打ち出し、音読することである。早い話が時間をかけることだ。確かに面倒な作業ではあるが、これをするとしないとでは、レポートの出来が全然違ってくる。
日本語の問題をクリアしたら、いよいよ、本格的に学術論文としての体裁を整えよう。
④引用形式を整える
⑤表紙とタイトルをつける
参考文献から引用する場合は、④引用のルールを守ること(第3章参照)が重要だ。自分で書いた文章と他人がどこかで書いている文章を明確に分けること、自分の考えと他人の考えを明確に分けることは、何かを論じるときの最低限のルールである。レポートは、当然書いている人自身の論であるから、その中に他人の文章や考えが割り込む場合は、それを明記することになる。もしそれをしなければ、「瓢窃だ」といわれても仕方がない。もちろん、いくら引用のルールを守っていても、引用だらけの「人力コピー」は、レポートの名には値しないことはいうまでもない。
あと、意外と忘れがちなのが、⑤表紙とタイトルである。教務掛に提出する場合は、教務掛所定の表紙があるが、これは教務掛の整理用の表紙である。だから、教務掛用の表紙とは別に、正式の表紙をつけた方がいい(ただ、紙のムダ遣いのような気もするが….)。表紙には、必ずタイトルと氏名を書く。講義名や提出日なども書いた方がいいだろう。ここでよくありがちなのは、タイトルの部分に、「○○学レポート」というように、講義名をタイトルにしてしまう、あるいは教官が出した課題をそのままタイトル部分に書いてしまうということ。これは望ましくない。できることなら、「自分が何について論じているのか」を読み手にアピールするような、そして読み手が「面白そうだ」と思うようなタイトルを、自力で考えたい。
そして、常識的なことなのだが、絶対に忘れてはならないことをいくつか述べておこう。以下のことは必ず守って欲しい。
⑥綴じる(レポートだったらホッチキス使用が無難)
⑦ページ数を打つ
⑧手書きの場合、鉛筆書きで提出しない
⑨ワードプロセッサを使用する場合、感熱紙のまま提出しない
そして最後にして最大の重要ポイントは、
⑩締切を守る
である。