修了者の声

阿部純一郎さん:

学部から博士課程まで名大社会学で過ごしました。修了後すぐに就職が決まり、いまは椙山女学園大学で観光とまちづくりの社会学を教えています。振り返ってみると、名大社会学は良い意味でコンパクトにまとまっていたと思います。これは別に「少人数で仲が良い」という意味ではありません。そうではなくて、そもそも規模が小さいので、特定の専門領域でグループを形成することがないという意味です。もちろん最初に一人の指導教員を選ぶのですが、他のゼミへの出入りを制限するものは一切なく、むしろ他分野の視点を通して自分の研究内容を見直し、磨き上げていくことが推奨されます。そういうオープンな雰囲気が名大社会学には根づいています。

例えば博士論文を書く前に、執筆資格を審査するセミナーが開かれます。そこには講座の全教員が参加し、それぞれ専門の立場から研究内容について細かな注文が出されます。想定外の質問が飛び交い、一回の審査でパスする人は滅多にいません。これを嫌がる院生はいます。自分の専門外からいろいろ言われ、執筆が遅れるからです。しかし「想定外」から発見が生まれ、研究がより独創的な方向へ進化すると考えることもできるでしょう。少なくとも私はそうでした。この時の経験は、博士論文を拙著『〈移動〉と〈比較〉の日本帝国史――統治技術としての観光・博覧会・フィールドワーク』(新曜社、2014年)としてまとめる時にも役立ちました。著書を公刊する際には、専門外の研究者を想定して書くことが求められるからです。

最近は旅行会社や観光協会の方々と仕事をする機会が多く、以前にも増して他分野との対話の重要性を意識するようになりました。その過程で予想もしなかったニーズに気づき、「彼らと一緒に何ができるか?」とコラボレーションの手法を考え、実践することにも面白さを感じ始めています。専門性はときに硬直性につながるものです。他分野の声に耳を傾ける柔軟性は、院生時代に鍛えられたものだと思っています。

(椙山女学園大学准教授、2010年度博士学位取得)

美濃羽亜希子さん:

名大社会学には、院生が自主的な研究報告会を開いてお互いのリサーチデザインについて議論しあうなど、知恵を出しあって良いものを作っていこうとする雰囲気があり、研究を進めるうえで大いに役立ちました。主ゼミ・副ゼミの先生方はもちろん他の先生方にも、修士論文にアドバイスをいただいたり、進路の相談に乗って下さったりと、大変お世話になりました。院生の研究テーマは多岐にわたっており、各人がそれぞれの問題意識にしたがって研究を進められる自由な雰囲気があります。

個人的には、米国の社会学部に交換留学できたこと、指導教員のティーチングアシスタントやリサーチアシスタントをさせていただけたこと、他大学で統計分析のリサーチアシスタントの仕事ができたことも知的成長につながりました。

修了後は国連事務局でのインターンシップ、青年海外協力隊(コロンビアの貧困家庭の社会調査など)、国際協力機構(JICA)研究所でのリサーチアシスタント(データの管理や分析など)を経て、現在は国際開発を学ぶためオランダに留学中です。先日、国際機関のジュニア・プロフェッショナル・オフィサー派遣制度に合格し、ILOの統計局でディーセントワークに関する統計の整備や分析の仕事に携わることになりました。

ILOでは、名大社会学で学んだ理論的・批判的な思考やレポートの書き方、リサーチデザインの立て方、社会調査法、統計分析法などを余すところなく生かせると思います。大きな挑戦ですが、学んだことを生かして世界のために働けることに喜びと情熱を持って頑張りたいと思います。

(International Institute of Social Studies in Erasmus University Rotterdam在学中、2014年度ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー派遣制度派遣予定、2009年度修士学位取得)

菊地桃子さん:

私は学部2年生から修士前期課程修了までの5年間名大社会学に在籍し、2011年4月からは愛知県庁で公務員として働いています。

社会学講座は在籍者が多く、各自が全く別々のテーマを研究している点に特長の一つがあると思います。例えば、私の同期の修士論文のテーマは「外国人労働者」「平和教育NGO」「建設現場で働く一人親方」「過疎地域の学校」「農本主義」「回族のネットワーク」と、まるでバラバラです(ちなみに、私は消防団の研究をしていました)。ただし、各自が孤独に研究しているのかというと、そうではありません。テーマは違っても社会学的に分析することは共通で、同じ研究室の仲間としてお互いの研究を高めあうことができました。ゼミや研究発表会を通して院生どうしで質問や助言をしあい、研究内容を練り上げていくことができたのです。このような環境のおかげで視野が広がり、自分の考え方を客観的に見直すことができるようになりました。私は一人でコツコツというより、先生や講座の皆さんとコミュニケーションをとりながら研究していたので、論文執筆をストレスなく進めることができました。

さて、社会人になってから最初の3年間は都市計画課、4年目からは廃棄物対策課に勤務しています。それぞれ全く異なる分野の職場ですし、今後どのような職場に異動になるかもわかりません。しかし、社会学研究室で多様な研究に取り組む仲間と机を並べた経験から、分野の異なる職場でも共通点を見いだし、興味をもって臨むことができます。公務員は法律に則って仕事をしており、ともすれば形式的処理だけに追われかねないなかで、社会学的に物事を捉えようとする視点が志を保つための基礎として役立っています。

(愛知県職員、2010年度修士学位取得)


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