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竹内恒夫教授の環境政策論時評

エネルギー地産「地消」でCO2大幅削減・資金還流など     竹内恒夫2015.09.29

「充足」型のエネルギーシステム、すなわち、エネルギーの地産「地消」によって、CO2の大幅削減、資金(電気代)の還流などがなされることを試算してみる。
試算の前提は次のとおりである。
ア 試算する地域は、実際にある総人口160万人の10市町からなる地域(ここでは「×△地域」という。)
イ この地域の再エネ電力設備への投資家には、①住宅用太陽光発電を設置する家庭と域内の投資家、②この地域に投資する域外の投資家とがあり、①と②の投資額は同額とする。
ウ この地域内にある太陽光発電、風力発電、バイオマス発電(ごみ発電を含む)やコジェネなどからの電力を「地域電力小売事業者」が調達し、域内の主に家庭に小売りする。
エ 「地域電力小売事業者」は、不安定な太陽光発電・風力発電からの電力をバイオマス発電・コジェネなどを調整電源として需要量に合うよう調達し、調達量と小売量の「同時同量」のオペレーションを行う。
オ 再エネ電力については、資源エネルギー庁発表の2015年4月現在の市町別の導入量(kW)及び新規認定量(kW、10kW以上の太陽光発電の新規認定量のうち70%が導入されると仮定)から調達量(kWh、10kW未満の太陽光発電からは20%を調達すると仮定)を算定す
る。
カ 「地域電力小売事業者」は、再エネ電力については電力卸取引所の電力価格(14円/kWh)で調達(調達費としてはこれに電力託送料(低圧電力:9.03円/kWh)が加算され23.03円/kWh)し、固定価格買取制度の買取価格で調達し、コジェネなどの調整電源については発電単価より若干高く調達する。
キ 「地域電力小売事業者」は、25円/kWhで主に家庭に小売りする。

以上のような前提で、この地域の電力体制が、現行の電力会社の体制を維持する場合と、この地域に「地域電力小売事業者」(民間、市民、自治体の出資)が参入する場合の
①地域の電力消費に起因するCO2の削減量
②資金(電気代)の還流額(残留額)
について比較してみる。
まず、①についてみる。
現行体制維持の場合には、△○電力が買い上げた再エネによって△○電力のCO2排出係数(○○kg-CO2/kWh)が下がるので、×△地域で消費する△○電力からの電力のCO2は248万トン削減される。
「地域電力小売事業者」が参入する場合には、域内の再エネ・コジェネなどを調達し、直接地域内に小売・「地消」することに伴うCO2削減量(180万トン)と、「地消」量以外の再エネ電力量を△○電力が買い上げることによる△○電力のCO2排出係数の低下に伴う域内のCO2削減量(204万トン)の合計384万トンの削減になる。
このように、「地域電力小売事業者」が参入して地産「地消」する場合には、現行体制維持の場合に比べて、電力の消費に起因するCO2排出量は45.2%の削減となる。
次に、②をみる。
×△地域から△○電力への電気料金支払額は3693億円(うち家庭からは662億円)と推定される。
現行体制維持の場合は、△○電力が買い取った再エネ電力の買取額のうち、×△域内の住宅用太陽光発電設置者と域内の再エネ投資家には合計179億円が還流される。
「地域電力小売事業者」が参入する場合には、小売事業者の小売料金収入760億円から、△○電力の送配電線の託送料272億円、域外の投資家への179億円を差し引いた309億円が域内に残留(還流)し、さらに△○電力の小売価格と小売事業者の小売価格との差額130億円がプラスされて439億円が域内に残留(還流)する。
このように、「地域電力小売事業者」が参入して、地域の再エネ・コジェネ電力などを調達し、「同時同量」で域内の家庭に小売(地消)する場合には、現行体制維持の場合に比べて、還流額は260億円多い。
また、「地域電力小売事業者」の小売収入760億円、再エネ・コジェネ電力などの調達コスト608億円の差額(151億円)に中から、域内での新たな再エネ施設やコジェネ施設を支援すると、これらの地域内での拡大再生産につながり、CO2削減量や資金残留額も拡大するのである。
さらに、「地域電力小売事業者」が挙げた利益は、出資者の出資割合に応じて出資者に配当される。自治体が出資する場合には、配当金は自治体の歳入となる。
そして、この「地域電力小売事業者」の電力調達先は電力卸取引所や既存の大電力会社ではなく、域内の再エネ、コジェネ(ガス)であるので、この「地域電力小売事業者」と契約する電力消費者は原子力や石炭火力からの電力を使わずに済むのである。

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