HOME 政策提言 グリーン革命へのコンセプト・ノート -環境構造改革- 地域のエネルギー事業の新展開(1)

政策提言Policy Proposal

(竹内恒夫  分散型エネルギー新聞 (2009年11月~2015年3月連載)

地域のエネルギー事業の新展開(1)2013.09.05

ドイツでは、1999年の完全自由化後、送電は連邦系統規制庁の監督の下に送電専門の会社が担い、電力取引所もでき、地域独占もなくなったものの、発電、配電の事業者はREW、E-onなどの4大電力と、1000近くの地域の公営電気事業者(都市事業団(Stadtwerke))や有限会社などの形態の民営電気事業者が併存するという19世紀からの体制が続いている。

こうした中で、大電力会社の占める割合は縮小傾向にあり、2030年には半分程度になるとの予想もある。その背景の1つは、再公営化である。自由化に伴い、一旦は、地域の都市事業団の4大電力への統合が進んだが、近年は、再公営化の傾向にある。特に、配電に関しては、連邦エネルギー管理法の規定に基づき、配電を行おうとする事業者は、自治体との間で「報償契約」を結ばなくてはならないので、その更新の時期が再公営化の機会となる。8月30日付けのフランクフルターアルゲマイネ(FA)紙によると、2011年だけでも全国で100以上の都市事業団が再び報償契約を結んだ。また、2007年から新たに60の都市事業団が設立されており、大都市のシュツットガルトでも今年になって新しい都市事業団が設立された。都市事業団は、2010年には全発電量の10%を占めたが、2012年には12.6%になった。本欄で紹介してきたベルリン、ハンブルグのように、市民が再公営化の市民請求(直接請求)の署名集めが成功し、この秋に、提案された都市事業団設立条例案の住民投票が行われるところもある。

2つ目には、特に、90年代末以降の連邦政府のエネルギーシフト政策(脱原発、再生可能電力・コジェネ推進)を背景に、地域で、組合や有限会社といった形態で、発電や配電の事業が開始されるケースも多い。このうち、自治体の出資が51%を超えるものは、前述の都市事業団である。これらの背景としては、原発からの電力を利用しない、あるいは、カーボンニュートラルなエネルギーを調達・供給するといった観点だけでなく、地域経済・雇用の再生、自治体収入の確保、安い電力価格での地元への供給などといった観点もある。FA紙は、再エネなどの分散型の小さな施設は収益性が高く、都市事業団などの方が競争力があるとしている。

電力市場のシステム改革が予定されている日本でも、今後、エネルギー市場において自治体が大きな役割を果たすのではないか。

折しも、ドイツ外務省は8月の最終週に、日本の自治体の首長らによるドイツの「地域におけるエネルギーシフト政策」の調査団を招待した。参加したのは、愛知県と福島県のそれぞれ1つの市と村の首長、3つの政令指定都市の部長らである。地域再生の一環として再生可能エネルギーによる発電の推進を目指す自治体、将来の電力市場の完全自由化などを見据えて自治体としてのエネルギー事業(発電・小売り、熱供給)を検討する自治体、工場の自家発電電力や排熱などを域内に有効利用することを検討している自治体などである。筆者は、この調査団に同行したので、2回にわたって報告する。

エネルギーシフトを担当する連邦環境省で筆者旧知の部長らから説明を受けた後、日本などからの視察団が多く訪れるブランデンブルグ州のフェルトハイム地区、バーデンブルテムブルク州のシェーナウ市、フライブルク市ボーバン地区のほか、同州のトートナウ市、フライアムト村、それに、チューリンゲン州のルドルシュタット市の計5自治体を訪れた。

まず、フェルトハイム地区である。ブランデンブルグ州のトロイエンブリーツェン市のフェルトハイム地区は、ベルリンの南西約70km。人口わずか130人。若者はベルリンに行き、学校も、スーパーもないが、「エネルギー自給自足の地区」として有名だ。ドイツ内外から年間3000人もの視察者が訪れる。

フェルトハイム地区では、エネルギー・クエレ有限会社(1997年に設立されたドイツでも大手の再エネ企業)が90年代から風力発電を設置し、現在、43基、7.41万kWの発電容量で、年間約1.4億kWhを電力し、また、2006年からは地元の農業組合と共同で家畜バイオガスによる発電(発電容量500kW、年間発電量約400万kWh)も行ってきている。さらに、2500kWの太陽光発電(太陽追尾型)もある。地区内での総発電量の約20%はドイツの4大電力会社の1つであるE.ONの子会社が8セント/kWhで買い上げ、約80%は電力取引所のスポットマーケットでブローカーに0.08セント/kWh払って取引に参加している。現在は量的には少ないが、グリッドオペレーターに0.05セント/kWh支払って需要家への直接販売を拡充していく方針だ。エネルギー・クエレ社が地区内で生産する年間発電量約1.4億kWhは、地区全体の年間電力需要100万kWhの140倍以上ある。

このように、フェルトハイム村は、再エネ電力の一大生産拠点である。しかし、住民はフェルトハイム地区をカバーするE.ONの子会社の系統から、価格が高く、かつ、原子力や石炭火力からの電気を含む電力を買わなくてはならない。

そこで、住民が出資する会社(フェルトハイム・エネルギー有限会社)を地元に設立して、フェルトハイム地区をカバーするE.ONの子会社の配電網とは別に、域内に独自の配電網と家畜バイオガス発電の排熱の熱導管をつくり、全37世帯と1つの製造工場(太陽光パネルの架台の製造、従業員18人)に電気と熱を供給するようにしたのである。独自の配電網・熱導管の設置には、州政府とEUから、かなりの援助を受けたが、これによって、「エネルギー自給自足の地区」となっているのである。住民はフェルトハイム・エネルギー社に1軒当たり3000ユーロの出資をしている。

フェルトハイム・エネルギー社はエネルギー・クエレ社から電気を調達して、自らの配電網で小売りする。電気代は、E.ONの子会社から買うと28セント/kWhであるが、フェルトハイム・エネルギー社からのは17セント/kWhである。40%も安い。バイオガス発電排熱は、冬季には木材チップでバックアップするが、4万リットルのお湯を80℃で熱導管に供給し、家庭などを巡って60℃~65℃になって戻ってきて、熱交換して循環する。

再エネ生産拠点であるフェルトハイム地区は、安価で、非原発で、カーボンニュートラルな100%地元の再エネで自給自足できるよう、既存配電網とは別に、地元独自の配電事業者を設置するという工夫がなされた例である。

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